718のEV化は
どうなったのか
完全EV化宣言、開発延期、中止検討報道、そしてCEOによる否定。さらにガソリンモデル復活の話まで。二転三転する718の現在地を、時系列で整理する。
2022年に完全EV化を宣言してから、この計画は何度も方針が揺れている。開発の遅れによる延期、新CEOによる中止検討の報道、その後の公式否定、そして「ガソリンモデルを復活させる」という話まで出てきた。
この記事では、何が公式に確認されていて、何がまだ不確かなのかを時系列で整理する。あわせて、現行の718(ガソリンモデル)の購入を検討している方にとって、この状況が何を意味するのかも考えてみたい。
// 目次
まず結論:情報が錯綜している
先に、現時点で言えることを整理しておく。
→ 一部メディアがそう報じているが、ポルシェCEOの発言とは食い違う。後述するが、CEOは2027年としている。
「開発中止」
→ 2026年初頭にそうした報道があったが、CEOが公式に否定している。
「ガソリンモデルが復活」
→ これは複数のメディアが報じており、方向性としては固まりつつある。ただし登場は2028年以降との見方が強い。
なぜこれほど情報が割れているのか。理由は単純で、ポルシェ自身が方針を変更してきたからである。古い情報と新しい情報が混在した結果、ネット上では矛盾した記述が並んでいる状態になっている。
新型車の情報を読むときは、「いつ時点の情報か」を必ず確認してほしい。
718に関しては、2022年、2025年、2026年で言っていることが変わっている。日付のない記事を読むと、古い情報を最新だと思い込んでしまう。
時系列で追う、方針転換の経緯
ここまでの流れを、時系列で並べてみる。
こうして並べると、この3年ほどで方針が大きく動いていることがわかる。EVのみ → 内燃機関も併売 → 中止検討 → 継続、という流れだ。
CEOは何と言っているのか
情報が錯綜するなかで、最も信頼できるのは経営トップの発言だろう。
開発車両を自らテストした同氏は、その仕上がりを「素晴らしい(Great Car)」と高く評価し、開発中止の噂を一蹴したと報じられている。
■ 走りの性格について
新型EV 718は「ゴーカートのようなハンドリング」を維持し、開発は最終段階にあるとされる。
■ 時期について
2027年の生産開始が確認されている、と報じられている。
ある報道では、発表時期について「2026年秋に詳細発表か。納車開始は2027年以降になる見込み」という見方も示されている。
発表と発売(納車)を混同している可能性もある。情報を読む際は、この区別にも注意したい。
現行718は受注を終了し、次世代はまだ登場していない。ある報道では、この空白が18か月を超えるとも指摘されている。
つまり「新しい718を買いたくても買えない」期間が続いているということだ。これは中古市場にも影響しうる。
ガソリンモデル復活という話
もう一つの注目点が、内燃機関モデルの復活だ。
EVだけにはしない、という方向へ
2022年の完全EV化宣言から一転、ポルシェは内燃機関モデルと電気自動車モデルの両方を展開する方針に転換したと報じられている。
報道によれば、ポルシェはEV専用プラットフォーム「PPEスポーツ」の設計を変更することで、ミッドシップエンジン搭載車をラインナップに復帰させる計画だという。
興味深いのは、この動きがポルシェ全体に及んでいる点だ。マカンなど完全電動化を予定していた他のモデルも、内燃機関搭載バージョンを再投入する見込みとされている。
ただし、登場は先になりそう
期待したいところだが、実現には時間がかかりそうだ。
ポルシェは2025年、ケイマンGT4、GT4 RS、スパイダーRSの後継となる最上位RSモデルに内燃機関を残す方針を発表したとされる。しかし、これを実現するにはEV専用のPPE Sportを大幅に設計し直す必要があり、登場は早くても2028年または2029年になると予想されている。
別の報道でも、「ガソリンモデルの復活はプラットフォームの適合を待つ必要があり、2028年頃までかかるかもしれない」という見方が示されている。
この件についてCEOは明確に言及しておらず、内燃機関RSモデルの将来は不確実なままとされている。
つまり「ガソリンモデル復活」も、現時点では確定事項ではない。
なぜ方針が揺れているのか
ここまで読んで、「なぜこんなに二転三転するのか」と思われたかもしれない。背景を整理しておく。
EV需要の伸び悩み
最も大きいのは市場環境の変化だろう。報道では、方針転換の理由として「近年欧州や中国でEV需要が伸び悩む中、生産の柔軟性と市場対応力を確保するための決定」と説明されている。
数年前の予測ほどEVが普及していない——これは多くのメーカーが直面している現実だ。
718という商品の強さ
もう一つ、見逃せない事実がある。
ある解説では、現行718について「2024年半ばから主要市場である欧州で販売が制限されているにもかかわらず、2025年に1.8万台以上を売り上げている」と指摘されている。
売れる市場が制限されているのに、それでも1.8万台。718というパッケージが、それだけ支持されているということだ。
これを完全にEVへ置き換えるという判断は、経営としては勇気がいる。既存の顧客が離れるリスクがあるからだ。方針が揺れた背景には、こうした事情もあるだろう。
911との関係
参考までに、上位モデルの方針にも触れておく。ポルシェは911だけは最後まで内燃機関を搭載し続けるモデルとして位置づけてきた。その方針自体に変わりはないとされている。
911のGTS やターボSに採用された「T-Hybrid」システムは、モータースポーツ由来の技術であり、走りのパフォーマンスを高めるための電動化とされる。環境対応というより、速さのための電動化という位置づけだ。
現行718を検討している人へ
ここからは、いま現行の718(ガソリンモデル)を検討している方に向けて書きたい。
「最後の内燃機関718」という位置づけ
現行718はすでに受注を終了している。そして次世代はEVとして登場し、内燃機関モデルが戻るとしても2028年以降になる見込みだ。
つまり現行718は、しばらくの間「最後のガソリン718」という位置づけになる。
こうした背景は、中古市場の相場に影響する可能性がある。過去にも、生産終了後に相場が上がった例は少なくない。とくにMT車や、GT4のような特別なグレードは、希少性が意識されやすい。
相場が上がる保証はどこにもない。仮に上がったとしても、その間の維持費や保険料は発生する。スポーツカーは、乗りたいから買うものだと思う。
ただ、「いずれ手放すときに、極端に値落ちしにくい可能性がある」という安心材料として捉えるのは、悪くない。
EVを待つべきか、いま買うべきか
判断の材料として、整理してみる。
| 選択 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 現行718(中古)を買う | 水平対向エンジンの音と感触を味わいたい/すぐ乗りたい | 年式によって状態の差が大きい。整備履歴の確認が重要 |
| EVを待つ | 最新技術に興味がある/充電環境がある | 登場は2027年以降の見込み。仕様や価格は未発表 |
| 内燃機関の次世代を待つ | 新車でガソリンの718が欲しい | 2028年以降。しかも実現は不確定 |
3番目の「内燃機関の次世代を待つ」は、待ち時間が長すぎると思う。2028年以降、しかも実現するかどうかも不確実だ。
水平対向エンジンのミッドシップスポーツに乗りたいのであれば、現行718の状態の良い個体を探すほうが現実的ではないだろうか。
EVの718も、おそらく素晴らしい車になるはずだ。タイカンを見れば、ポルシェが電動化で手を抜かないことはわかる。ただそれは「別の魅力を持つ車」であって、現行718の代わりではないように思う。
忘れてはいけない981——最後の自然吸気
718の話をするなら、その前の世代に触れないわけにはいかない。
現行718は4気筒ターボである。しかし一世代前の981型は、自然吸気のフラット6を積んでいた。そして今、この981の相場が動き始めている。
「楽器のような音」と言われる理由
981のNAフラット6は、しばしば楽器にたとえられる。回転を上げていったときの音の伸び、アクセルを戻したときの余韻——ターボ車では再現しにくい領域がある。
あるオーナーレビューでも、NA(自然吸気)エンジンは、ターボ車とは一線を画す「フラット6サウンド」を響かせると表現されている。
ターボは過給によって出力を稼ぐ構造上、排気がタービンを回すため、音のエネルギーが一部そこで消費される。加えて4気筒と6気筒では、そもそも発する音の質が違う。この差は、数字には表れない。
981GTSとスパイダーという特別な存在
981の中でも、とくに注目されているグレードがある。
あるオーナーの言葉が、この車の立ち位置をよく表している。「981GTSはポルシェ最後のNA六気筒でありカタログモデル最上位車種。ともかく希少性が高く、手に入りにくいのに欲しい人はたくさん」と。
さらに続けて、こうも語られている。「718GTSがあれ(四気筒ターボ)ですから、乗り換えることもない」。
次の世代に乗り換える先がない。これが981GTSの相場を支えている構造だ。
981スパイダーも同様だ。軽量化された手動幌、911カレラS由来の3.8L自然吸気エンジン——生産台数も限られており、すでに希少車として扱われている。
相場の現状
実際の流通価格を見てみる。ある中古車サイトでは、981型ボクスターの車両価格は288万円〜1,050万円という幅で掲載されている。
| グレード | エンジン | 位置づけ |
|---|---|---|
| ボクスター(ベース) | 2.7L NA フラット6 | 比較的入手しやすい |
| ボクスターS | 3.4L NA フラット6 | 中間グレード |
| ボクスターGTS | 3.4L NA フラット6(出力強化) | カタログモデル最上位 |
| ボクスター スパイダー | 3.8L NA フラット6 | 希少・特別仕様 |
同じ981でも、グレードによって価格が3倍以上違う。この差が、そのまま希少性への評価を表している。
① 自然吸気のフラット6は、もう作られない
718は4気筒ターボ。次世代はEV。供給が増える見込みがない。
② 乗り換え先がない
981のオーナーが「次も同じ体験を」と思ったとき、選択肢が存在しない。手放す理由が薄い。
③ 電動化の流れが加速している
内燃機関そのものが希少になっていく。とくに音を持つエンジンへの評価は、今後さらに高まる可能性がある。
ある専門店の見解でも、「ベースモデルやSよりは下がらないと思っている」という見方が示されている。
相場が上がる保証はどこにもない。仮に上がったとしても、保有中には維持費・保険料・車検費用が発生する。ポルシェの整備費は決して安くない。
同じ専門店の見解でも、こう語られている。「ボクスターGTSが欲しいのなら、値段じゃなくて気に入った個体があれば手に入れること」。
乗りたいから買う。これが正しい動機だと思う。値落ちしにくいことは、あくまで安心材料として捉えたい。
皮肉な話だが、次世代がEVになるという事実そのものが、981の希少性を高めている。
もし718が自然吸気のフラット6に戻るのであれば、981を急いで買う理由は薄れる。しかし現実には、EVが2027年以降、内燃機関モデルは2028年以降で、しかも実現も不確定。
「あの音」を求めるなら、いま市場にある個体から選ぶしかない——この構造が、相場を支えている。
まとめ
・CEOは開発車両を「素晴らしい車」と評価
・2027年の生産開始が確認されていると報じられている
・「ゴーカートのようなハンドリング」を維持する方向
・現行718はすでに受注終了
・価格、グレード構成、航続距離などのスペック
・内燃機関モデルの復活(2028年以降との見方。実現も不確定)
・日本市場への導入時期
718のEV化をめぐる情報は、この3年で大きく揺れてきた。完全EV化を宣言し、延期し、中止を検討し、継続を表明し、さらにガソリンモデルの復活まで語られている。
背景には、EV需要の伸び悩みと、718という商品の根強い人気がある。制限された市場でも年1.8万台を売る車を、どう次世代へ繋ぐか——ポルシェも悩んでいるのだろう。
購入を検討している方に向けて言えば、次世代を待つのであれば、それなりの覚悟が要る。EVでも2027年以降、内燃機関なら2028年以降、しかも確定ではない。
いま乗りたいのであれば、現行718の状態の良い個体を探すほうが確実だと思う。「最後のガソリン718」という位置づけは、今後ますます意識されていくはずだ。
そして音にこだわるなら、一世代前の981も視野に入れたい。自然吸気のフラット6は、もう新車では手に入らない。981GTSやスパイダーのような上位グレードは、すでに希少車として扱われており、今後さらに評価が高まる可能性がある。ただし、あくまで乗りたいから買う——その動機を忘れずにいたい。
続報が入り次第、この記事も更新していきたい。
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※本記事は2026年9月時点で確認できた各種報道にもとづきます。ポルシェからの公式発表ではない情報を多く含むため、記載内容は変更される可能性があります。CEOの発言とされる内容も、各メディアの報道を通じたものです。正確かつ最新の情報は、ポルシェの公式発表および正規販売店にてご確認ください。
10年以上にわたり中古車の購入・乗り換えを繰り返してきた実体験派。カーショーや展示会巡りも趣味で、車への関心は尽きない。専門用語に頼らず、クルマに詳しくない方にも伝わるやさしい言葉で情報を発信することをモットーにしている。全国の販売店ネットワークを活用した中古車マッチングサービス「AUTOMATCH」を運営中。






