デリカD:5は
思っていた車と違った
あの無骨な顔つきから想像していたのは、硬派でタフで、快適さとは無縁の車。実際に乗ってみたら、その予想はいい意味で裏切られた。後期型・クリーンディーゼルの率直な試乗記。
// 目次
試乗した車両とスペック
まず、乗った車両の素性を確認しておこう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| モデル | 三菱 デリカD:5(後期型) |
| エンジン | 2.2L 直列4気筒 ディーゼルターボ |
| 最高出力 | 145ps/3,500rpm |
| 最大トルク | 38.7kgm/2,000rpm |
| トランスミッション | 8速AT |
| 燃費 | 13.6km/L(WLTCモード) |
| 排出ガス浄化 | 尿素SCRシステム(AdBlue使用) |
| 試乗シーン | 街乗り中心 |
注目したいのは38.7kgmという最大トルクだ。これは2.0Lクラスのガソリン車では到底届かない数字で、しかも2,000rpmという低回転で発生する。この特性が、後述する「重さを感じない走り」に直結してくる。
まず、あの顔について
デリカD:5を語るうえで、デザインの話は避けて通れない。2019年2月のビッグマイナーチェンジでは、ミニバンの常識を覆す縦型マルチLEDヘッドライトの採用や、ダイナミックシールドによる力強いスタイリングが大きな話題を呼んだ。
正直に言えば、この顔は好みが分かれると思う。ただ実車を目の前にすると、写真で見るより圧倒的に存在感がある。ミニバンなのにSUVのような佇まいで、駐車場に停まっていても他の車に埋もれない。「街で見かけたら振り返る」種類の車だ。
ミニバン市場を見渡すと、多くのモデルは「広さ」「快適性」「燃費」で競い合っている。その中でデリカD:5は、本格的な4WDシステムを備えた”走破性のあるミニバン”という独自の立ち位置にいる。似た車が他にない。
デザインの好みは分かれても、この唯一性そのものが選ぶ理由になる——実車を前にすると、それがよく分かる。
乗り込んで驚いた——内装とシート
ドアを開けて運転席に座る。ここで最初の予想外があった。
内装が、想像していたより良い
アウトドア志向の車というと、内装は「汚れてもいい実用一辺倒の作り」を想像しがちだ。しかしデリカD:5の室内は、思っていたよりずっと丁寧に仕上げられていた。
素材の質感、パネルの合わせ、スイッチ類の配置。ラグジュアリーを売りにする車と張り合うわけではないが、「無骨な外観に対して、中はきちんと乗用車している」というギャップがある。長時間過ごす場所として、しっかり考えられている印象を受けた。
そして特筆したいのがシートの出来だ。座面のクッション性、体の支えられ方、ポジションの取りやすさ。これが良い。街乗りの短時間でも「あ、これは疲れにくいシートだな」と分かる質だった。
視点の高さも快適さに寄与している。SUV的な着座位置から見渡す視界は良好で、前方の状況が掴みやすい。これは運転のしやすさにも、同乗者の快適さにも効いてくる要素だ。
乗り心地は想像よりマイルド
そして最大の予想外が、乗り心地だった。
本格的な4WDシステムを持ち、悪路走破を掲げる車なので、足回りは硬めだろうと覚悟していた。ところが実際に走らせると、街中の路面をきちんといなしてくれる。段差や継ぎ目でも、突き上げが不快なレベルまで来ない。
この印象は筆者だけのものではないようだ。実際のオーナーからも「少し硬いイメージがありましたが良い感じです」「アスファルト路面でも乗り心地が良いと思いました」という声が上がっている。
つまり「デリカ=乗り心地が硬い」というのは、実車を知らない人が抱きがちな先入観ということになる。見た目のイメージが、実像より先に広まってしまっている好例かもしれない。
もちろん、フワフワと柔らかいわけではない。車高がある車なりの動きはある。ただ「タフさと引き換えに快適性を捨てた車」ではないことは、はっきりお伝えしておきたい。家族を乗せて日常的に使うことを、十分想定して作られている。
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そして「軽い」——街乗りでの扱いやすさ
もうひとつ、強く印象に残ったことがある。この車、思っていたより「軽い」。
もちろん実際の車重が軽いわけではない。ここで言う軽さは、運転していて感じる体感的な軽快さのことだ。
取り回しが楽
デリカD:5のサイズは、全長4,800mm以下に収まっている。数字だけ見れば大きいが、街中で走らせると持て余す感覚が少ない。視点が高くて前方が見やすいこと、車両感覚が掴みやすいことが効いているのだろう。
「大きな車を運転している」という緊張感が、思ったより薄い。狭い道でのすれ違いや、駐車場での取り回しも、身構えるほどではなかった。
重さを感じない走り
そして走り出しの軽さだ。ここで効いてくるのが、先に触れた38.7kgmという太いトルクである。
これが街乗りで何を意味するか。信号からの発進、坂道、車線変更——アクセルを深く踏み込まなくても、スッと前に出る。エンジンを唸らせて加速する必要がない。結果として、車重を意識させられる場面がほとんどない。
8速ATとの組み合わせも良く、変速が細かく効くので、常に力の出る回転域を使える。「重い車を無理やり動かしている感じ」がまったくしないのは、このパワートレインの功績だ。
これは実際に乗らないと分からない部分だと思う。スペック表の「2.2L・145ps」という数字だけを見ると控えめに映るが、体感は数字以上だ。ミニバンに必要なのは最高出力ではなく、実用域のトルク——それを実感させてくれる走りだった。
デリカD:5の正体
ここまでの印象を整理すると、この車の実像が見えてくる。
「タフさを持った、普通に快適なミニバン」
デリカD:5は、無骨な見た目から想像される「快適性を犠牲にしたオフローダー」ではなかった。むしろ内装もシートも乗り心地も、日常使いを十分に意識した作りになっている。そのうえで、本格的な4WDと悪路走破性を持っている。
つまり「普段は快適なミニバン、いざとなればどこへでも行ける」——これがデリカD:5の正体だ。あの顔つきは、その性能を主張するための表現であって、乗り心地を犠牲にした結果ではない。
「見た目は好きだけど、日常で使えるか不安」という理由で候補から外している人がいるなら、それはもったいない誤解かもしれない。
どんな人に向いているか
実際に乗った印象をもとに、向き不向きを整理する。
・ミニバンの実用性と、SUVの走破性を両方欲しい人——この両立をここまで高い次元でやっている車は他にない
・雪国・悪路を走る機会がある人——本格4WDの安心感は代えがたい
・アウトドアが趣味の人——キャンプ、スキー、釣り。行動範囲が広がる
・人と同じ車に乗りたくない人——唯一無二の存在感
・長距離を走る人——ディーゼルの燃料コストとトルクは長距離で効く
・ディーゼルの維持:尿素SCRシステムを採用しているため、AdBlue(尿素水)の補充が必要になる
・デザインの好み:ここは正直、実車を見て判断してほしい。写真と実物で印象が変わる車だ
・用途との一致:街乗りだけで完結するなら、他にも快適で経済的な選択肢はある。悪路や雪道を走る機会があってこそ真価が出る
まとめ
三菱デリカD:5(後期・クリーンディーゼル)に乗って感じたのは、見た目のイメージと実際の乗り味のギャップだった。
硬派で無骨な外観から想像していたのは、快適性を犠牲にしたタフな道具のような車。しかし実際は、内装は丁寧に作られ、シートは快適で、乗り心地も街中で角が立たない。そして38.7kgmの太いトルクのおかげで、車重を感じさせない軽快な走りをみせる。取り回しも、身構えるほどではなかった。
「デリカは硬い」「大きくて扱いにくそう」——もしそんな先入観で候補から外しているなら、一度実車に乗ってみてほしい。あの顔つきが好きで、でも実用性が不安で迷っている人にこそ、この車の中身は響くはずだ。見た目で選んで、中身で満足できる。そういう稀有な一台だと思う。
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- デリカD:5 公式サイト — 三菱自動車
- デリカD:5 主要スペック(2.2Lディーゼル145ps/38.7kgm・8速AT・13.6km/L) — 最新自動車情報
- デリカD:5 ビッグマイナーチェンジの変更点(縦型LED・ダイナミックシールド) — SUV LAND
- デリカD:5 オーナーの口コミ・レビュー — carview!
- デリカD:5 詳細解説(全長4,800mm以下での居住性) — MOTA
※本記事は2026年8月時点の情報および筆者個人の試乗体験にもとづきます。スペックは年式・グレードにより異なる場合があります。乗り味の評価は個人の感想であり、路面状況・タイヤ・装備等によって印象は変わります。購入にあたっては必ずご自身で試乗のうえご判断ください。
10年以上にわたり中古車の購入・乗り換えを繰り返してきた実体験派。カーショーや展示会巡りも趣味で、車への関心は尽きない。専門用語に頼らず、クルマに詳しくない方にも伝わるやさしい言葉で情報を発信することをモットーにしている。全国の販売店ネットワークを活用した中古車マッチングサービス「AUTOMATCH」を運営中。






