お菓子の袋が白黒に?ナフサショック、いまどうなってる?

2026.05 — ナフサ危機・最新状況

お菓子の袋が白黒に?
ナフサショック、いまどうなってる?

ホルムズ海峡の封鎖から約2ヶ月。「遠い話」だったはずの影響が、スーパーの棚にも、車のパーツにも、じわじわと現れ始めている。

ナフサショックを最初に取り上げたのは、ホルムズ海峡の緊張が高まり始めた頃でした。あれから2ヶ月が経ち、「石油化学業界の話」だったはずの影響が、もう私たちの日常に見え始めています。お菓子の袋が白黒印刷になった。ゴミ袋が値上がりした。車の部品の納期がさらに延びている——。今回は、現時点での状況をまとめます。
📄
ナフサショックの恐怖。自動車業界に与える影響とは?
ナフサとは何か・なぜ問題になるのかの基本はこちらから

2026年5月 現在地——数字で見る状況

// ナフサ価格(3月25日)
+56%
シンガポールスポット価格が1,000ドル/MTを突破。2月末比で56%上昇
// 国内在庫(民間)
約20日分
国家備蓄制度の対象外のため、事実上の備蓄はほぼなし
// エチレン設備
12基中6基
国内エチレン生産プラントの半数が減産体制。フル稼働は3基のみ
// 国産ナフサ価格(4〜6月予測)
11万円超/kl
1〜2月は62,000円台だったが、2倍弱への高騰が見込まれる

一時停戦の楽観ムードもあったものの、停戦交渉は早くも行き詰まっており、ナフサ価格は最悪2倍になるとの見方もあります。ホルムズ海峡は「条件付き通航」という不安定なフェーズに移行しており、完全な正常化には至っていません。

スーパーで「見える」ようになった変化

石油化学の話は難しく聞こえますが、影響はすでに身近なところに出ています。

お菓子の袋が白黒になる

食品メーカーの一部が、パッケージの印刷をフルカラーから白黒・単色に切り替え始めています。原因はインク・塗料の原料がナフサ由来であること。塗料大手の関西ペイントは、自動車や建設などに使われるシンナー製品の原材料の確保が極めて困難な状況だとして、5月13日の出荷分から製品価格を50%以上引き上げると発表しています。これが食品パッケージのインクにも波及しています。「コスト削減のため印刷を最低限にする」という選択を迫られているメーカーが増えているのが実態です。

ゴミ袋・レジ袋が値上がり

ゴミ袋やレジ袋などをつくる日本サニパックは、5月下旬から取り扱う全商品を30%以上値上げすると発表しています。袋類はポリエチレン・ポリプロピレンなどのプラスチックでできており、これらは全てナフサ由来です。ポリ袋を当たり前に使っていた生活の「コスト前提」が変わりつつあります。

韓国では買い占めパニックも

韓国では3月下旬に有料ゴミ袋の買い占めが起き、スーパーやコンビニで1人あたりの購入枚数を制限する事態になりました。金民錫首相は「包装材の需給不安で食料の供給まで脅かされている」と指摘しています。日本でも同様の動きが起きる可能性は否定できません。

自動車業界への影響——部品から塗装まで

前回の記事でも触れましたが、状況はさらに具体的になっています。

エチレン設備の半数が減産

三菱ケミカル旭化成エチレンは2026年4月11日から原料調達難を理由に稼働を縮小しました。国内に12基あるエチレン生産プラントのうち、4月初旬時点で6基が減産体制に追い込まれており、フル稼働を維持できているのはわずか3基という異常事態です。

エチレンは自動車部品の樹脂素材・ゴム部品・塗料の原料です。これが不足すると、バンパー・内装パーツ・ホース類・シーリング材まで影響が連鎖します。

TOTOがユニットバスの受注を一時停止

TOTOがユニットバスの受注を一時停止・調整したケースが2026年4月に報道されました。必要な設備が必要なときに入手できなくなる可能性が現実のものになっています。これは住宅設備の話ですが、自動車の新車生産でも同じ構図が起きています。

塗料の出荷制限が直撃

自動車の塗装工程で使うシンナー・塗料の原材料確保が困難になっています。前述の関西ペイントによる出荷制限と50%超の値上げは、自動車メーカーの塗装ラインにも直結する話です。板金・修理工場での修理コストが上がり始めているのはすでに報告が出ています。

自動車オーナーへの影響:事故修理・板金塗装のコストが上昇しています。また、エンジンルームのゴムホース類・ゴムパーツなどの補修部品の供給が不安定になる可能性があります。車の定期点検でゴム部品の状態を早めに確認しておくことをおすすめします。

代替調達は進んでいるが、完全解消には時間がかかる

政府と石油化学各社は代替調達を急いでいます。2026年5月には米国からのナフサ輸入が前年比で約4倍(月間約135万kl規模)まで拡大する見込みで、米国・オーストラリア・インド・アルジェリアといった非中東地域からの代替調達を急いでいます。5月時点で代替調達率が約6割に達し、政府は現在の在庫と合わせ「年を越えて継続できる見通し」が立ったと表明しました。

ただし「見通しが立った」=「元の価格に戻る」ではありません。喜望峰経由への迂回で保険料は従来の10倍以上に跳ね上がり、商船の多くがコスト増を余儀なくされています。輸送コストが高いままである以上、ナフサ由来製品の価格は当面、元の水準には戻りにくい構造になっています。

構造的な問題:日本のナフサ輸入の約74%は中東産に依存しており、原油には国家備蓄が254日分あるのに、ナフサは国家備蓄制度の対象外で民間在庫は約20日分しかありません。今回の危機は「たまたま起きたこと」ではなく、この構造的な無防備さが露わになったと言えます。

一方で、ガソリン価格はどうなっているのか

ここまではナフサ——プラスチックや塗料の工業原料——の話でした。同じ原油から作られますが、ガソリンは用途も価格の決まり方も全く別物です。燃料として車を動かすガソリンには、政府の補助金という変数が加わります。

結論から言うと、今のガソリン価格は「補助金で抑えられた見かけ上の値段」です。補助金なしなら、現時点で200円を軽く超えています。

// レギュラーガソリン全国平均価格の推移(2022〜2026年)

店頭価格(4月27日)

169.7円/L

補助なし推計価格

209円超/L

現行補助金(4/30〜)

39.7円/L

店頭価格(補助込み) 補助なし参考価格 補助金額(右軸) 今後の予測
店頭価格は補助金で抑制されており、補助なしでは2022年に220円超ピーク、2026年3月に209円超を記録。

出典:資源エネルギー庁「石油製品価格調査」、経済産業省 燃料油価格激変緩和対策事業。補助なし価格は各時点の補助金額を加算した推計値。

補助金の変遷——ずっと同じ金額ではない

2022年のウクライナ危機以降、補助金は最大41.4円/Lまで拡大した後に段階的に縮小。2025年12月31日に暫定税率が廃止されて補助ゼロになり、2026年1〜2月は141〜155円台まで下落しました。しかしホルムズ海峡封鎖で急騰し、3月19日から再び緊急補助が始まりました。

今後の見通し——3つのシナリオ

// 楽観
160〜170円/L
ホルムズ正常化・補助継続。2025年末水準に戻る
// 中立
175〜190円/L
補助縮小・輸送コスト高止まり。夏以降じわじわ上昇
// 悲観
190〜210円/L
封鎖長期化・原油$100超。2022年ピークを塗り替える可能性

補助金は永続的な政策ではなく、縮小・廃止のたびに価格が跳ね上がる構図が繰り返されています。燃費性能を軸にした車選びが、今まで以上に現実的な判断になっています。

クルマのことはAUTOMATCHへ

部品の供給状況・修理コスト・乗り換えタイミングなど、
今の状況を踏まえた相談を受け付けています。

🔍 無料で相談する