ホンダオデッセイ
年度内に販売終了
名車が消える理由
ミニバンブームの火付け役が、32年の歴史に幕を下ろす。累計125万台を売ったオデッセイが、なぜ年間8,000台まで落ち込んだのか。アルファードとの10倍差、SUVシフト、ホンダの赤字転落——その背景を読み解く。
// 目次
何が報じられたか——販売終了の概要
2026年6月19日、読売新聞・日経新聞などが一斉に「ホンダがオデッセイの国内販売を年度内に終了する方針を固めた」と報じた。ホンダからの正式発表ではなく報道ベースだが、複数の大手メディアが報じており信頼性は高い。
現行モデルは2013年発売の5代目。当初は狭山工場(埼玉県)で生産していたが、2021年末の同工場の完成車生産終了に伴い一度生産・販売を終了。その後、顧客や販売店からの復活を求める声を受けて、2023年から中国の工場で生産を再開し輸入販売していた。今回の決定は、その「復活」からわずか3年での再撤退となる。
オデッセイとは——ミニバンブームの火付け役
オデッセイの歴史は、日本のミニバン市場の歴史そのものと言っていい。32年にわたる歩みを振り返る。
1994年——「絶望の淵」から生まれた逆転の一台
初代オデッセイは1994年、4代目社長・川本信彦氏の時代に発売された。当時のホンダはバブル崩壊後の経営危機にあり、新規の生産ラインに投資する余裕がなかった。そこで既存のセダン用ラインで作れる「全高を抑えた乗用車ベースのミニバン」として開発されたのがオデッセイだった。
制約から生まれたこの低床設計が、結果的に時代を変えた。当時のミニバンは商用車ベースの背の高い車が主流だったが、オデッセイは立体駐車場に入る扱いやすさとセダンのような走行性能を両立。ヒンジドア(横開きドア)を採用し、乗用車から乗り換えても違和感のない感覚で、ファミリー層から爆発的な支持を集めた。
発売翌年の1995年には国内だけで12万5,000台超を販売。経営危機にあったホンダを救う大ヒットとなり、「ホンダを立て直した車」として語り継がれている。
世代ごとの進化——走りと低さの追求
オデッセイは世代を重ねるごとに「走りの良いミニバン」という個性を磨いていった。2代目(1999年)では完成度を高め、3代目(2003年)では全高を1,550mm以下に抑えて立体駐車場への対応を強化、低重心スポーティミニバンの方向性を明確にした。4代目(2008年)はさらに車高を下げ、スポーツワゴンに近いスタイルへ。走りを愛するユーザーから熱い支持を受けた。
転機となったのが2013年発売の5代目(現行型)だ。それまでの低全高路線から一転、全高を上げて両側スライドドアを採用。室内空間を重視する市場のニーズに合わせた「正常進化」だったが、これによりオデッセイ独自の「低く構えたスポーティさ」という個性は薄まった。皮肉にも、この方向転換がアルファード系の大型ミニバンとの正面競争に巻き込まれる一因にもなった。
| 世代 | 発売年 | 特徴 |
|---|---|---|
| 初代 | 1994年 | 低床設計でミニバンブームを創出。ホンダを救った一台 |
| 2代目 | 1999年 | 完成度を高め人気を不動のものに |
| 3代目 | 2003年 | 全高1,550mm以下で低重心スポーティ路線を確立 |
| 4代目 | 2008年 | さらに低くスポーツワゴン的なスタイルへ |
| 5代目(現行) | 2013年 | 全高を上げスライドドア採用。室内空間重視へ転換 |
累計販売台数は約125万台。日本に「ミニバンという選択肢」を定着させ、ステップワゴン・ストリーム、そして他社のミニバン参入のきっかけを作った歴史的なモデルだった。その個性的な歩みゆえに、根強いファンを今も持ち続けている。
残るホンダミニバンは2車種——ステップワゴンとフリードの今
オデッセイの販売終了で、ホンダの国内ミニバンは「ステップワゴン」「フリード」の2車種に絞られる。この2台の現状はどうなっているのか。
フリード——ホンダ登録車で最も売れている主力
意外に思うかもしれないが、2025年にホンダで最も売れた登録車(軽自動車を除く)はコンパクトミニバンのフリードだ。2024年6月に3代目へフルモデルチェンジし、シンプルで上質なデザインと扱いやすいサイズで好調をキープ。トヨタ シエンタと「コンパクトミニバン2強」を形成している。ホンダの国内ミニバン戦略は、今やフリードが屋台骨を支えている。
ステップワゴン——「ちょうどいい」が苦戦も改良で巻き返し
ミドルサイズの6代目ステップワゴン(2022年発売)は、原点回帰したシンプルなデザインが特徴だ。ただし販売面ではトヨタ ノア/ヴォクシー、日産 セレナの後塵を拝してきた。2025年の年間登録台数は約5万7,000台でカテゴリー内では苦戦が続く。価格がやや割高な点や、好調なフリードとの食い合いが要因とされる。
| 車種 | 2025年 年間登録台数(目安) | 立ち位置 |
|---|---|---|
| トヨタ ノア+ヴォクシー | 合計で十数万台規模 | ミドルミニバン圧倒的1位 |
| 日産 セレナ | 約7万1,000台 | ミドルミニバン2番手 |
| ホンダ ステップワゴン | 約5万7,000台 | セレナを追う3〜4番手 |
| ホンダ フリード | 登録車トップクラス | コンパクトミニバンでシエンタと2強 |
| ホンダ オデッセイ | 約8,000台 → 販売終了へ | 高級ミニバンで苦戦 |
オデッセイが消え、ステップワゴンも苦戦が続く中、ホンダの国内ミニバンは事実上フリードが主力という構図になっている。一方で2025年5月にはステップワゴンが一部改良で装備を充実させ、2025年11月にはセレナを抜いてカテゴリー2番手に浮上する月も出てきた。改良による巻き返しの兆しもある。
なぜ売れなくなったのか——3つの理由
① 高級ミニバン市場でアルファードに敗れた
2002年にトヨタが投入した「アルファード」が、高価格帯ミニバン市場の勢力図を一変させた。アルファードはファミリー用途だけでなく、企業の役員送迎車・VIP送迎としても人気を獲得。「大きく・豪華で・存在感がある」という方向性が市場の支持を集め、オデッセイの「走りの良い低床ミニバン」という個性は相対的に埋もれていった。
② 市場全体がミニバンからSUVへ移行した
近年の自動車市場の最大のトレンドが「SUVシフト」だ。かつてファミリーカーの定番だったミニバン需要の一部がSUVに流れ、市場全体が縮小傾向にある。アウトドアブームやデザイン志向の高まりもSUV人気を後押しし、ミニバン専業に近いオデッセイは逆風を受け続けた。
③ 中国生産・輸入モデルという弱点
現行オデッセイは2023年から中国工場で生産し、輸入販売していた。「顧客の声で復活した」という経緯はあったものの、中国生産・輸入という体制はコスト面・ブランドイメージ面で必ずしも有利ではなかった。販売の勢いは戻らず、結果として中国工場の稼働率適正化の対象にもなった。
アルファードとの「10倍差」
オデッセイの苦戦を最も端的に示すのが、ライバルとの販売台数の差だ。
| 車種 | 2025年 国内販売台数(目安) | 差 |
|---|---|---|
| トヨタ アルファード | 約8〜9万台 | — |
| ホンダ オデッセイ | 約8,000台 | 約10分の1 |
同じ高級ミニバンカテゴリでありながら、アルファードが約9万台を売る一方、オデッセイは約8,000台。実に10倍以上の差がついた。1995年に12万5,000台を売った車が、30年後には年間8,000台。この数字の落差が、販売終了という決断の重みを物語っている。
ホンダの2026年3月期連結決算は、最終利益が4,239億円の赤字に転落した。主力の北米市場でEV需要が想定以上に鈍化したことが響いた。二輪事業が好調な一方、四輪事業の立て直しが急務となっており、売れ筋でないモデルの整理は避けられない経営判断でもある。中国工場(年間生産能力120万台に対し2025年度は約63万台)の稼働適正化という狙いも、オデッセイ終了の背景にある。
ホンダの今後——大型SUVへの転換
オデッセイの販売終了は、単なる「撤退」ではなく「ラインアップ刷新」の一環だ。
オデッセイの販売終了で、ホンダの国内ミニバンは「ステップワゴン」「フリード」の2車種に減る。その穴を埋めるため、ホンダは2027年にも国内市場に3列シートの大型SUVを投入する考えだとされる。市場のSUVシフトに合わせ、ミニバンの代わりに大型SUVで多人数乗車ニーズに応える戦略だ。
報道によれば、ホンダは2027年にも3列シートの大型SUVを国内投入する計画だ。さらに将来的には上級ミニバンを投入する構想もあるという。ミニバン市場が縮小しSUV市場が拡大する中で、「3列シートSUV」はミニバンユーザーの受け皿として理にかなっている。オデッセイの終了は、この戦略転換のための整理という側面が強い。
中古市場への影響——名車の価値は上がるか
販売終了が報じられると、その車の中古市場には注目が集まる。オデッセイの場合はどうか。
「最後の現行型」を求める動きが出る可能性
新車で買えなくなると分かると、「今のうちに新車を買っておきたい」という駆け込み需要が生まれることがある。特にオデッセイは走りの良さで根強いファンを持つため、現行型の在庫や中古車に注目が集まる可能性がある。
走り重視派にとっては中古の選択肢として残る
オデッセイの「低重心で走りが良いミニバン」という個性は、アルファード系の大型ミニバンにはない魅力だ。「大きすぎるミニバンは要らない、でも走りの良い多人数乗車車が欲しい」という層にとって、中古のオデッセイは引き続き合理的な選択肢になる。歴代モデルも含めて、走り重視のミニバンファンには価値が再認識されるだろう。
販売終了は寂しいニュースだが、中古車という視点では「その車の価値を改めて見直す機会」でもある。オデッセイのように明確な個性を持つ車は、新車が消えても中古市場で愛され続ける。走りの良いミニバンを探しているなら、選択肢が減る前の今が動くタイミングかもしれない。
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販売終了が決まったオデッセイは、走り重視派にとって中古の狙い目です。
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- ホンダ、オデッセイの国内販売を終了へ 2026年度内にも — 日本経済新聞(2026年6月19日)
- ホンダ、中国生産のミニバン『オデッセイ』国内販売終了へ[新聞ウォッチ] — レスポンス(2026年6月19日)
- ホンダ「オデッセイ」、年度内にも国内販売終了…大型SUV投入しラインアップ刷新図る — 読売新聞オンライン(2026年6月19日)
※本記事は2026年6月22日時点の報道情報に基づきます。販売終了はホンダからの正式発表ではなく報道ベースの情報です。販売台数は各報道による概算値です。最新情報はホンダ公式発表をご確認ください。






