新型パジェロ
ついに復活
三菱の象徴だったクロスカントリーSUV「パジェロ」が、7年ぶりに帰ってくる。期待の大きいニュースだが、ネット上には確定情報と予想が入り混じっているのも事実だ。ここでは「すでに決まっていること」と「まだ予想の域を出ないこと」を、はっきり分けて整理したい。
// 目次
【確定】三菱が公式に発表したこと
まずは、確度の高い話から押さえたい。以下は2026年5月29日に三菱自動車が公式に発表した内容だ。憶測ではなく、メーカー自身が明言していることなので、ここは信頼していい。
・2026年秋に世界初公開(ワールドプレミア)する
・日本仕様は2019年生産終了以来、国内では7年ぶりの復活(海外向けは2021年に生産終了)
・ピックアップトラック「トライトン」のラダーフレームをベースに、キャビンや前後サスペンションを専用開発
・生産拠点はタイのMMTh
・パジェロを頂点とする「パジェロシリーズ」として展開していく方針
とりわけ注目したいのが、新型パジェロがトライトンのラダーフレームをベースに改良を施し、悪路走破性はもとより上質で快適な乗り心地を目指して専用開発されたという点だ。地味に思えるかもしれないが、ここは重要な意味を持つ。ラダーフレーム——はしご状の頑丈な骨格は、本格クロカンの証といえる構造だ。近年のSUVは乗用車寄りのモノコック構造が主流で、街乗りには快適でも、本格的な悪路走破には不利とされる。そこをあえてラダーフレームで作り込むというのは、「街乗り風SUVではなく、本物のクロカンとしてのパジェロを復活させる」という三菱の姿勢の表れとみていいだろう。
さらに加藤隆雄CEOは新型パジェロを「三菱自動車らしさを体現するフラグシップ商品」と位置づけ、今後パジェロシリーズとしてラインアップを展開していく方針を示した。1台で終わらせず、シリーズとして育てていく構想だ。かつての「パジェロミニ」「パジェロイオ」のように、サイズ違いの派生モデルが再び登場する可能性も出てきた。とくに軽SUVの「パジェロミニ」が復活すれば、ジムニー一強の市場に一石を投じることになりそうで、この展開には期待が高まる。
【報道ベース】9月2日公開説の真偽
ここからは慎重に扱いたい情報だ。「新型パジェロ」で検索すると、あたかも決定事項のように書かれた記事が数多く出てくる。しかし、その中にはまだ三菱が公式に認めていない、予想や独自入手レベルの情報も少なくない。混同を避けるため、ひとつずつ仕分けしていく。
自動車専門メディアのベストカーが「販売店から入手した情報」として、ワールドプレミアが9月2日に行われると報じている。ただし三菱の公式発表はあくまで「秋」であり、9月2日という具体的な日付は公式には確定していない。この日はお披露目であって、発売日ではない点にも注意。
・予想価格は530万円〜?
一部メディアは新型パジェロの価格を530万円〜と予想しているが、三菱からの正式な価格発表はまだない。あくまで予想値だ。
・日本発表10月・発売12月?
これも一部メディアの予想スケジュール。公式には「秋に世界初公開」までしか確定していない。
整理すると、こういうことになる。「トライトンベース」「秋に世界初公開」「シリーズ化」は、三菱自身が明言した確定情報。対して「9月2日」「530万円前後」「12月発売」は、現時点ではメディアの予想・独自入手の域を出ない。価格が気になる気持ちは筆者も同じだが、こればかりは正式発表を待つしかない。本気で購入を検討するなら、秋の正式発表で公式スペックと価格を確認してから判断するのが賢明だ。飛び交う情報に一喜一憂せず、落ち着いて続報を待ちたい。
【予想】パワートレイン・価格・デザイン
ここからは、現時点で各メディアが報じている予想スペックを紹介する。あらためて念を押すが、以下はいずれも正式発表前の予想・独自入手情報であり、三菱が公表した内容ではない。数字も媒体によって差がある。「こういう見方が出ている」という参考として読んでほしい。
ベースとなるトライトンと共通の2.4L直4クリーンディーゼルターボが有力視されている。トライトンでの数値は最高出力204ps/最大トルク470Nmで、まずはディーゼルから展開されるとの見方が多い。加えて、アウトランダーPHEVの技術を発展させたPHEV(プラグインハイブリッド)の追加を予想する媒体もある。
■ 駆動・制御系
三菱の車両運動統合制御システム「S-AWC」や、運転支援機能「MI-PILOT」の搭載が予想されている。いずれも現行の三菱車で実績のある技術だ。
■ ボディ・デザイン
歴代を思わせるスクエア(角ばった)なフォルムが予想されている。自動車メディアがティザー画像から分析したところでは、背面タイヤは廃止される見込みで、これはパジェロ史上初とみられる。中央には大きなPAJEROロゴが配置され、そのロゴと三菱マークがともにブラック塗装されているという。
予想価格(媒体により幅あり)
最も知りたい価格については、各メディアの予想に幅がある。あくまで「予想の範囲」として捉えてほしい。
| グレード(予想) | 予想価格帯 |
|---|---|
| エントリー(ディーゼル) | 約400〜530万円 |
| 中間グレード | 約470〜600万円 |
| 上級/PHEV(予想) | 約550〜700万円 |
※上記はすべて各メディアの予想値であり、三菱の公式発表ではありません。媒体によって「530万円〜」「400万円〜」「600万円〜」など見解が分かれています。
価格については、メディアによって「530万円から」「400万円台から」「600万円台から」と、予想がかなりばらついている。これは裏を返せば、誰も正確な価格をつかめていないということでもある。強く意識されているとみられるライバルのランドクルーザー250が520万円台からであることを踏まえると、それに近い価格帯に着地する可能性はあるが、確定は秋の正式発表を待つほかない。予想価格を鵜呑みにして資金計画を立てるのは避けたほうが無難だ。
歴代パジェロの歴史(〜2019年)
新型の話に入る前に、パジェロという車がたどってきた歴史を振り返っておきたい。その偉大さを知ってこそ、今回の復活の意味も深く理解できるからだ。ここで紹介するのは、2019年までに販売された「歴代パジェロ」の話であり、今回の新型とは別物だ。とはいえ、この積み重ねがあったからこその復活であることは間違いない。
まず豆知識をひとつ。「パジェロ(PAJERO)」という車名は、南米アルゼンチンのパタゴニア地方に生息する野生の山猫「パジェロキャット」に由来する。野性味と気品を併せ持つその姿を、車のキャラクターに重ねたわけだ。ちなみに、スペイン語圏では別の意味に取られるため、スペインでは「モンテロ(Montero=猟師)」、イギリスでは「ショーグン(SHOGUN)」の名で売られていた。同じ車が国によって違う名前をまとっていたというのも、パジェロの世界的な広がりを物語るエピソードだ。
・2代目(1991〜1999年):90年代RVブームの主役。新車月間販売で1位を獲得したことも。
・3代目(1999〜2006年):骨格構造を刷新し、現代的なSUVへ進化。
・4代目(2006〜2019/2021年):13年間の長寿モデル。2019年に国内向け生産を終了(海外向けは2021年まで)。
初代(1982年)——「SUV」という概念を作った一台
初代パジェロが登場した1982年当時、世の中には「武骨な業務用四駆」か「快適な乗用車」しかなかった。その中間、つまり「悪路も走れて、日常も快適」という発想はほとんど存在しなかった。初代パジェロは、三菱がジープのライセンス生産で培った四駆技術を土台に、この空白地帯に切り込んだ。副変速機を備えた本格的な走破性を持ちながら、内装や乗り心地にも配慮する——今でいうSUVの原型を作ったのが初代パジェロだ。メタルトップとキャンバストップという2つのボディで登場し、アウトドア志向の層に強く支持された。
2代目(1991年)——絶頂期、そして「4WD=パジェロ」
パジェロの人気が爆発したのが、1991年登場の2代目だ。折しも日本はRVブームの真っ只中。2代目は世界初のスーパーセレクト4WDやマルチモードABSなどを採用し、走る・曲がる・止まるを高次元で追求した。ソフトトップからロングボディの7人乗りワゴンまで多彩なバリエーションを揃え、幅広い層を取り込む。その勢いはすさまじく、一時は国内の新車月間販売台数で1位を獲得するほどだった。「4WDといえばパジェロ」というイメージが日本中に定着したのは、まさにこの時代である。三菱のフラッグシップとして、絶頂期を迎えていた。
3代目(1999年)——構造を捨てて進化した
1999年の3代目は、パジェロにとって大きな決断の世代だった。それまでのラダーフレーム単体の構造から、ラダーフレームをモノコックボディに溶接した「ビルトインフレーム構造」へと転換。ボディサイズを拡大しながらも、約100kgの軽量化と低重心化を実現した。悪路性能を保ちつつ、オンロードでの快適性と扱いやすさを引き上げる狙いだ。時代がクロカンからオンロード重視へと移りつつある中での進化だったが、皮肉にも「人気が爆発した2代目ほどは売れなかった」とも言われる。それでも技術的には、現代的なSUVへの重要な一歩だった。
4代目(2006年)——最後の砦、静かな幕引き
2006年に登場した4代目は、結果的にパジェロの歴史に幕を引く世代となった。3代目のビルトインフレーム構造を受け継ぎつつ、安全性能や走破制御を熟成。滑りやすい路面でも安定した駆動力を確保する制御が磨かれ、「悪路も高速も安心して走れるオールラウンダー」として完成度を高めた。しかし、SUV市場の主流がより都会的なモデルへと移る中で販売は伸び悩み、13年という長い現役期間を経て、2019年に国内向け生産を終了。派手な最終章ではなく、静かな幕引きだった。この4代目が、中古市場でいま手に入る「最後のパジェロ」でもある。
そしてダカールの伝説
パジェロを語るうえで、モータースポーツでの功績は外せない。
パジェロの名を世界に知らしめたのが、世界一過酷なモータースポーツとして知られる「ダカールラリー(旧パリ・ダカールラリー)」での活躍だ。完走率が5割を切ることもある過酷なレースで、パジェロは通算26回参戦し、7大会連続を含む通算12回の総合優勝という圧倒的な記録を打ち立てた。数字だけでは伝わりにくいかもしれないが、これは驚異的な実績だ。世界中の車が砂漠で脱落していくなか、パジェロは走り切り、勝ち続けた。「砂漠を越えても壊れない日本車」という評価を、実戦で証明してみせたのである。
この活躍は、日本国内でも大きなブームを生んだ。パジェロのパリダカでの奮闘をNHKが連日特番で放映したことで、パリダカブームに火がつき、パジェロ人気はさらに加速した。テレビの前で砂煙を上げて走るパジェロに胸を熱くした人も、少なくなかったはずだ。日本人ドライバーの活躍も記憶に残る。1997年には篠塚建次郎が日本人として初めてパリダカで総合優勝を果たし、増岡浩も2002年・2003年に連覇を達成した。彼らが駆るパジェロの勇姿は、多くのファンにとって忘れがたい光景となっている。
ちなみに、パジェロの人気を物語る面白いエピソードがある。パジェロの製造を担っていた岐阜県坂祝町(さかほぎちょう)は、町の税収の相当部分をパジェロ製造が支えていたことから、「パジェロの町」とも呼ばれていた。一台の車が、ひとつの町を潤していたわけだ。それだけパジェロという存在が大きかったことの証といえるだろう。
もうひとつ、特筆すべき数字がある。累計生産台数は約324万台に達し、「本格的な4WDでも日常使いに快適であっていい」というコンセプトは、当時の自動車市場にとってひとつのパラダイムシフトだった。今でこそSUVは街にあふれているが、その扉を最初に開いた一台がパジェロだったといっても過言ではない。武骨なオフロード車と快適な乗用車——その間にあった壁を取り払い、幅広い層をSUVへと誘ったのがパジェロだった。だからこそ、この名の復活には特別な重みがある。単なる懐かしさではなく、日本のSUV文化の原点が戻ってくる、という意味で注目に値するのだ。
なぜ今、復活するのか
一度は国内市場から退いたパジェロが、なぜこのタイミングで復活するのか。単なる懐古趣味ではなく、市場環境と三菱の戦略という、明確な理由がある。
| 復活の背景 | 内容 |
|---|---|
| 本格SUV人気の再燃 | ランドクルーザーやジムニーなど、悪路も走れる本格SUVが世界的に再評価されている |
| 三菱の強みへの回帰 | 三菱は4WD・オフロード技術が強み。得意分野で存在感を高めたい |
| トライトンの基盤活用 | すでに持つトライトンのラダーフレームを活かせば、開発を効率化できる |
| ブランド資産の再活用 | 「パジェロ」という強力なブランド名は、世界的な認知と信頼がある |
三菱は2026年5月の新中長期ビジョンで、2026年度から2031年度にかけて計13モデルの新型車を投入する計画を示し、その中でパジェロシリーズをはじめとするオフロード商品群を「尖った商品」として開発リソースを集中させると明言している。この「尖った商品」という表現は示唆的だ。あらゆる需要に応えようとする総花的な車づくりではなく、三菱にしかできない領域で勝負する——という方針の表れといえる。経営的に厳しい時期も経験した三菱が、自らの原点であるオフロード技術に立ち返ろうとしている。パジェロの復活は、その決意を象徴する一台と位置づけられそうだ。
今すぐパジェロに乗りたいなら(中古)
新型の登場は2026年秋以降となる見込みだ。「発表まで待てない」という人や、「あの武骨な旧型のデザインこそが好き」という人には、中古の歴代パジェロという選択肢も十分に魅力的だ。実際、旧型ならではの無骨さを求めて中古を探すファンは今も少なくない。
・4代目(2006〜2019年):最後の国内モデル。流通量もそれなりにあり、本格クロカンとして今も根強い人気を保っている。
・ラダーフレーム構造ゆえ悪路に強く、キャンプや雪国での頼もしさは大きな魅力。
・一方で、車体が大きく燃費は現代の街乗りSUVに見劣りする点は正直に伝えておきたい。ガソリン代や税金といった維持費は、事前に把握しておくべきだ。
・年式の古い個体では、下回りのサビや足回りのヘタリを必ず確認したい。ここを軽視すると、後々の出費がかさむことになる。
新型を待つか、いま歴代モデルを手に入れるか。いずれにせよ「パジェロを選ぶ」という楽しみは変わらない。
まとめ——正確な現在地
新型パジェロについて、2026年7月末時点で確定していることと、まだ予想の段階のことを整理すると、次のようになる。
伝説のパジェロが、7年の時を経て本格クロカンSUVとして帰ってくる。車好きにとって、これは素直に心躍るニュースだ。かつて憧れたあの角ばったシルエットが、令和の技術でどう生まれ変わるのか——期待は高まるばかりだ。とはいえ、繰り返しになるが、細かなスペックや価格はまだ「予想」の段階にすぎない。確実なのは、秋にその姿を現すということだけだ。飛び交う情報を「公式か、予想か」と冷静に見極めながら、その日を待ちたい。正式発表があり次第、この記事にも最新情報を追記していく予定だ。
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※本記事は2026年7月末時点の情報に基づきます。確定情報は三菱自動車の公式発表、報道・予想情報はその旨を明記しています。9月2日公開説・予想価格・発売時期は各メディアの独自入手・予想であり、三菱の公式発表とは異なります。最新の正確な情報は三菱自動車の公式発表でご確認ください。






