日本車は終わる?ホンダ・日産の赤字ニュースから読み解く

日本車は本当に終わるのか?
ホンダ・日産の赤字から読み解く中古車選びの防衛線

激震が続く自動車業界のデータを整理し、賢い日本車の中古車選びを考える

ホンダ・日産の赤字ニュースと日本車の中古車選びを考えるイメージ

ホンダが上場来初の大幅赤字、日産が2年連続の大規模赤字とリストラを発表し、日本の自動車業界が大きく揺れています。SNSでは「日本車は終わり」「中国EVに完敗」という声が広がり、日本車の中古車選びをどう考えればよいか迷っている方も多いのではないでしょうか。しかし、感情的な報道をそのまま受け取って判断を急ぐのは危険かもしれません。この記事では、ホンダと日産の決算数字を整理しながら、業界の動向が私たちの中古車選びに本当は何を意味するのかを、データとともに冷静に読み解いていきます。

1. ホンダの赤字は「損切りの決断」だった

6,900億円
2026年3月期
最終赤字(最大見込)
1962
上場以来
初めての赤字転落
2.5兆円
EV関連損失
(今期・来期以降合計)
▍ホンダ 最終損益の推移(億円)
2024年3月期
(前期)
+8,358億円
2026年3月期
(今期予想)
▲最大6,900億円
出典:日本経済新聞(2026年3月12日)

ホンダは2026年3月期の連結最終損益が最大6,900億円の赤字になる見通しだと発表しました。 1962年の上場以来ずっと黒字を維持してきた同社にとって、これが初めての最終赤字転落です。リーマンショック時ですら黒字を守ってきたメーカーだけに、業界全体への衝撃は大きなものでした。三部社長は月額報酬の30%(3ヶ月分)を自主返上することも発表されています。

ただし、この赤字の内訳を見ると少し違った景色が見えてきます。主な原因は、北米向けに計画していたEV3車種の開発を中止したことによる資産の減損処理です。EV関連の損失は今期と来期以降を合わせると最大2兆5,000億円にのぼる可能性がある一方、会社としての手元資金は4兆円超を維持しているとされています。 見通しの悪くなった投資に早めに見切りをつける「一時的な損切り」という側面が大きく、財務の健全性自体は一定程度保たれていると見ることもできます。

📌 ポイント
ホンダの赤字は業績の連続的な悪化ではなく、EV投資の減損を一括処理したことによる「一時的な損失」という性格が強いと考えられます。前期の最終利益8,358億円という実績も踏まえると、構造的な経営破綻とは区別して捉えることが重要です。

2. 日産が直面する、より根深い問題

▍日産 最終損益の推移(億円)
2023年3月期
+2,216億円(黒字)
2025年3月期
(前期)
▲6,708億円
2026年3月期
(今期確定)
▲5,500億円
出典:日本経済新聞(2026年4月27日)、東洋経済オンライン(2025年7月)
2万人
グループ全体の
約15%に相当する人員削減
(2027年度まで)
7工場
世界17拠点から10拠点へ
追浜工場(神奈川)含む
生産終了予定

日産は2025年3月期に6,708億円の最終赤字を計上し、続く2026年3月期も5,500億円の赤字が確定。2年連続の大幅赤字となりました。 さらに、経営再建計画「Re:Nissan」として2万人の人員削減と世界7工場の閉鎖を発表。1999年にカルロス・ゴーン氏が断行した「日産リバイバルプラン」に匹敵する規模のリストラです。

ゴーン体制との最大の違いは、外部から強力なリーダーを招聘したわけではなく、EV市場での出遅れや中国市場でのシェア急落という構造的な逆風が同時に吹いている点です。 ただし、日産の現金・預金残高は十分な水準を保っており、即座の経営破綻リスクとは区別して見る必要があります。

▍日産 主要イベント タイムライン
2025年3月期
最終赤字 6,708億円。ホンダとの経営統合協議も数ヶ月で破談に。
2025年5月
「Re:Nissan」発表。2万人削減・7工場閉鎖を正式表明。追浜工場も対象。
2026年3月期
最終赤字 5,500億円(確定)。2年連続の大幅赤字だが、前年比1,200億円縮小。
2027年3月期(目標)
自動車事業の営業損益・FCFの黒字化を目指す。固定費5,000億円削減が目標。
出典:日経新聞(2026年4月27日)、東洋経済オンライン、ダイヤモンド

3. 「日本車オワコン」論は本当か?冷静に見ると

こうした状況を受けて、日本自動車工業会のトップが産業の存続に関わる強い危機感を表明し、海外メディアも日本の自動車産業の衰退を相次いで報じています。SNSには「日本車は中国EVに完敗した」という論調が溢れ、不安を感じている方も多いかもしれません。

▍日産の世界年間販売台数の変化(参考)
2017年度
(ピーク)
579万台
2024年度
334万台(▲42%)
2026年度
(計画)
320万台
出典:東洋経済オンライン(2025年7月)

日産の販売台数はピーク時の2017年度から約42%減少しており、設備・人員規模が実態と乖離したままだったことが今回のリストラの背景にあります。 また、VWやフォードなど欧米メーカーもEV部門で巨額損失を計上しており、EV投資の見直しは日本だけの問題ではありません。

⚠ 見逃しやすい視点
インフラが未整備な地域や過酷な気候条件の国々では、日本車の耐久性・メンテナンスのしやすさは依然として強みとして機能しています。「日本車オワコン」という論調は、主に中国・北米市場の文脈で語られていることが多く、すべての市場・用途に当てはまるわけではありません。

4. トヨタ「一人勝ち」とハイブリッド正義の落とし穴

競合メーカーが苦境に立つ中、SNSで評価が急上昇しているのがトヨタです。EV一辺倒を避け、ハイブリッド車を軸にした全方位戦略を維持してきた判断が「正解だった」という論調が広まっています。実際、ホンダ自身も今回のEV戦略見直しを受けて、北米で需要が高まっているハイブリッド車の開発を強化する方針を打ち出しています。

かつて「EV化に乗り遅れている」と批判されていたトヨタが今では賞賛される——この流れ自体が、自動車業界のトレンドがいかに短期間で変わりうるかを示しています。ただし、「トヨタが強い=トヨタのすべての車種が自分にとってベスト」という短絡的な見方には注意が必要です。メーカーの業績ランキングと、個別の車両の価値は切り離して考えるべきです。

▍パワートレイン別 特徴比較(中古車購入時の参考)
項目 ガソリン ハイブリッド ディーゼル EV
中古車の
取得コスト
低〜中 中〜高
(人気車は高め)
安め〜中
(値落ち大のため)
燃料・電気代 普通 節約 節約 安い
維持費・整備 シンプル 比較的安定 DPF注意 充電環境必要
リセールバリュー
(売却時の価値)
距離次第で
安定
人気車種は高い
(高走行時は注意)
規制動向に
左右される
急速に下落
(構造的な問題)
バッテリー
リスク
なし 高走行で
交換リスク
なし 劣化・交換費
数十万円〜
向いている
使い方
郊外・地方 市街地〜
中距離
長距離・
高速主体
自宅充電
環境がある方
※一般的な傾向を示したものです。車種・使用状況により大きく異なります。
▍パワートレイン別 値落ちの速さイメージ(3年落ち残価率の目安)
HV
(人気車種)
残価率 約80〜90%
ガソリン
(人気車種)
残価率 約60〜75%
ディーゼル
(輸入車)
残価率 約50〜65%
EV
(全般)
残価率 約30〜55%(変動大)
※あくまで目安。車種・グレード・走行距離・市場動向により大きく変わります。出典:各種中古車査定データ(2025〜2026年)をもとに作成
📌 ハイブリッドの「値落ちが早い」イメージの正体
トヨタRAV4・ヤリスクロス・アルファードなど国内外で需要の強い人気ハイブリッド車は、3年落ちで残価率80〜90%前後と非常に高い水準を維持しています。「ハイブリッドも値落ちが早い」と感じるケースの多くは、走行距離が多い・不人気グレード・旧式モデルの話であることがほとんどです。ただし、高走行域ではバッテリー交換リスクが価格に織り込まれ始めるため、走行距離の確認は欠かせません。

5. 業界の激震が中古車選びに与える本当の影響

では、こうした業界動向は日本車の中古車選びに何をもたらすのでしょうか。最も注意が必要なのは、ニュースへの過剰反応が引き起こす「相場の歪み」です。「あのメーカーは工場が閉まるから部品が手に入らなくなる」といった根拠の薄い噂が広がると、中古車の市場価格が一時的に乱高下することがあります。

📌 冷静な視点
メーカーが赤字を計上したからといって、すでに製造されて市場に出回っている車両のエンジンや足回りの品質が今日から急に変わるわけではありません。また、日産の2026年3月期の最終赤字は5,500億円と当初予想(6,500億円)より1,000億円縮小しており、コスト削減が一定の成果を出し始めているという見方もできます。

感情的な相場の歪みが生まれる局面は、冷静な判断ができる買い手にとっては逆にチャンスになることもあります。世間の感情が動いている時こそ、車両そのものの状態を個別にフラットに評価する視点が、満足度の高い日本車の中古車選びにつながります。

6. 情報が多い時代だからこそ、判断の軸を持つ

メーカーの将来やパワートレインの優劣について、さまざまな意見がSNSや記事に溢れています。ガソリン、ハイブリッド、ディーゼル、EVのどれが正解かという議論は、乗り手のライフスタイルや使い方によって答えが変わります。「絶対的な正解」を一つに絞ろうとすること自体が、判断を難しくしているのかもしれません。

大切なのは、ニュースの煽り文句に同調するのでも、特定のメーカーやパワートレインへの思い込みで動くのでもなく、実際に自分がどんな使い方をするのかを起点に中古車選びを進めることではないでしょうか。マクロな業界ニュースはあくまで参考情報の一つとして頭に入れつつ、目の前の車両そのものを冷静に評価する——その判断軸を持てているかどうかが、結果的に後悔のない選択につながります。

📋 この記事のまとめ
  • ホンダの赤字は主にEV減損の一括処理であり、財務体力は維持されている
  • 日産は2年連続赤字だが、2026年3月期の赤字幅は前年比で縮小(▲5,500億円)
  • 日産のリストラ「Re:Nissan」は2万人削減・7工場閉鎖という大規模なもの
  • 「日本車オワコン」の論調は一面的であり、地域・用途により状況は異なる
  • メーカーの業績と、個別の中古車両の価値は切り離して評価することが重要

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