日本車は本当に終わるのか?
ホンダ・日産の赤字から読み解く中古車選びの防衛線
激震が続く自動車業界のデータを整理し、賢い日本車の中古車選びを考える
ホンダが上場来初の大幅赤字、日産が2年連続の大規模赤字とリストラを発表し、日本の自動車業界が大きく揺れています。SNSでは「日本車は終わり」「中国EVに完敗」という声が広がり、日本車の中古車選びをどう考えればよいか迷っている方も多いのではないでしょうか。しかし、感情的な報道をそのまま受け取って判断を急ぐのは危険かもしれません。この記事では、ホンダと日産の決算数字を整理しながら、業界の動向が私たちの中古車選びに本当は何を意味するのかを、データとともに冷静に読み解いていきます。
1. ホンダの赤字は「損切りの決断」だった
最終赤字(最大見込)
初めての赤字転落
(今期・来期以降合計)
ホンダは2026年3月期の連結最終損益が最大6,900億円の赤字になる見通しだと発表しました。 1962年の上場以来ずっと黒字を維持してきた同社にとって、これが初めての最終赤字転落です。リーマンショック時ですら黒字を守ってきたメーカーだけに、業界全体への衝撃は大きなものでした。三部社長は月額報酬の30%(3ヶ月分)を自主返上することも発表されています。
ただし、この赤字の内訳を見ると少し違った景色が見えてきます。主な原因は、北米向けに計画していたEV3車種の開発を中止したことによる資産の減損処理です。EV関連の損失は今期と来期以降を合わせると最大2兆5,000億円にのぼる可能性がある一方、会社としての手元資金は4兆円超を維持しているとされています。 見通しの悪くなった投資に早めに見切りをつける「一時的な損切り」という側面が大きく、財務の健全性自体は一定程度保たれていると見ることもできます。
2. 日産が直面する、より根深い問題
約15%に相当する人員削減
(2027年度まで)
追浜工場(神奈川)含む
生産終了予定
日産は2025年3月期に6,708億円の最終赤字を計上し、続く2026年3月期も5,500億円の赤字が確定。2年連続の大幅赤字となりました。 さらに、経営再建計画「Re:Nissan」として2万人の人員削減と世界7工場の閉鎖を発表。1999年にカルロス・ゴーン氏が断行した「日産リバイバルプラン」に匹敵する規模のリストラです。
ゴーン体制との最大の違いは、外部から強力なリーダーを招聘したわけではなく、EV市場での出遅れや中国市場でのシェア急落という構造的な逆風が同時に吹いている点です。 ただし、日産の現金・預金残高は十分な水準を保っており、即座の経営破綻リスクとは区別して見る必要があります。
3. 「日本車オワコン」論は本当か?冷静に見ると
こうした状況を受けて、日本自動車工業会のトップが産業の存続に関わる強い危機感を表明し、海外メディアも日本の自動車産業の衰退を相次いで報じています。SNSには「日本車は中国EVに完敗した」という論調が溢れ、不安を感じている方も多いかもしれません。
日産の販売台数はピーク時の2017年度から約42%減少しており、設備・人員規模が実態と乖離したままだったことが今回のリストラの背景にあります。 また、VWやフォードなど欧米メーカーもEV部門で巨額損失を計上しており、EV投資の見直しは日本だけの問題ではありません。
4. トヨタ「一人勝ち」とハイブリッド正義の落とし穴
競合メーカーが苦境に立つ中、SNSで評価が急上昇しているのがトヨタです。EV一辺倒を避け、ハイブリッド車を軸にした全方位戦略を維持してきた判断が「正解だった」という論調が広まっています。実際、ホンダ自身も今回のEV戦略見直しを受けて、北米で需要が高まっているハイブリッド車の開発を強化する方針を打ち出しています。
かつて「EV化に乗り遅れている」と批判されていたトヨタが今では賞賛される——この流れ自体が、自動車業界のトレンドがいかに短期間で変わりうるかを示しています。ただし、「トヨタが強い=トヨタのすべての車種が自分にとってベスト」という短絡的な見方には注意が必要です。メーカーの業績ランキングと、個別の車両の価値は切り離して考えるべきです。
| 項目 | ガソリン | ハイブリッド | ディーゼル | EV |
|---|---|---|---|---|
| 中古車の 取得コスト |
低〜中 | 中〜高 (人気車は高め) |
中 | 安め〜中 (値落ち大のため) |
| 燃料・電気代 | 普通 | 節約 | 節約 | 安い |
| 維持費・整備 | シンプル | 比較的安定 | DPF注意 | 充電環境必要 |
| リセールバリュー (売却時の価値) |
距離次第で 安定 |
人気車種は高い (高走行時は注意) |
規制動向に 左右される |
急速に下落 (構造的な問題) |
| バッテリー リスク |
なし | 高走行で 交換リスク |
なし | 劣化・交換費 数十万円〜 |
| 向いている 使い方 |
郊外・地方 | 市街地〜 中距離 |
長距離・ 高速主体 |
自宅充電 環境がある方 |
5. 業界の激震が中古車選びに与える本当の影響
では、こうした業界動向は日本車の中古車選びに何をもたらすのでしょうか。最も注意が必要なのは、ニュースへの過剰反応が引き起こす「相場の歪み」です。「あのメーカーは工場が閉まるから部品が手に入らなくなる」といった根拠の薄い噂が広がると、中古車の市場価格が一時的に乱高下することがあります。
感情的な相場の歪みが生まれる局面は、冷静な判断ができる買い手にとっては逆にチャンスになることもあります。世間の感情が動いている時こそ、車両そのものの状態を個別にフラットに評価する視点が、満足度の高い日本車の中古車選びにつながります。
6. 情報が多い時代だからこそ、判断の軸を持つ
メーカーの将来やパワートレインの優劣について、さまざまな意見がSNSや記事に溢れています。ガソリン、ハイブリッド、ディーゼル、EVのどれが正解かという議論は、乗り手のライフスタイルや使い方によって答えが変わります。「絶対的な正解」を一つに絞ろうとすること自体が、判断を難しくしているのかもしれません。
大切なのは、ニュースの煽り文句に同調するのでも、特定のメーカーやパワートレインへの思い込みで動くのでもなく、実際に自分がどんな使い方をするのかを起点に中古車選びを進めることではないでしょうか。マクロな業界ニュースはあくまで参考情報の一つとして頭に入れつつ、目の前の車両そのものを冷静に評価する——その判断軸を持てているかどうかが、結果的に後悔のない選択につながります。
- ホンダの赤字は主にEV減損の一括処理であり、財務体力は維持されている
- 日産は2年連続赤字だが、2026年3月期の赤字幅は前年比で縮小(▲5,500億円)
- 日産のリストラ「Re:Nissan」は2万人削減・7工場閉鎖という大規模なもの
- 「日本車オワコン」の論調は一面的であり、地域・用途により状況は異なる
- メーカーの業績と、個別の中古車両の価値は切り離して評価することが重要
参考記事
- ホンダが最大6900億円の最終赤字、26年3月期 EV損失で上場来初 — 日本経済新聞(2026年3月12日)
- ホンダ、最大6900億円の巨額赤字に転落 社長らが報酬自主返上 — 産経新聞(2026年3月12日)
- ホンダ、最大6900億円の赤字 上場来初、EV見直しで損失 — 時事通信(2026年3月13日)
- 日産が5500億円の最終赤字 26年3月期、2年連続 — 日本経済新聞(2026年4月27日)
- 日産が「2万人削減と7工場閉鎖」の大リストラ、遅すぎた決断の代償 — 東洋経済オンライン(2025年7月)
- 日産がようやく示した「あるべき構造改革プラン」— ダイヤモンド編集部(2025年5月)
- ホンダ上場来初の赤字の意味 — ビジネスジャーナル
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