EVは失速したのか
データで見る2026年の
リアルと中古の狙い目
「EVオワコン」「EV失速」——SNSは極論で溢れている。でも実際のデータはどうなのか。なぜメーカーは人気がないのにEVを推すのか。補助金で安い軽EV、リセール激安の中古狙い目、そしてマンション充電問題まで、僕の実体験も交えて本音で書く。
// 目次
「失速」も「普及」も両方が事実——データで見る
まず大前提として、「EV失速」と「EV普及」は、どちらも事実だ。立場によって見えている景色が違うだけで、両方が同時に起きている。
「失速」を示す事実
- ホンダが2026年3月期に1兆5,778億円のEV関連損失を計上、上場来初の最終赤字(4,239億円)に転落
- 米国が2025年9月末で最大7,500ドルのEV税額控除を打ち切り
- フォードがEV事業縮小・約3兆円の特別損失
- 日本のEVシェアは約2.7%と世界平均(約26%)の約10分の1
「普及」を示す事実
- 世界のEV販売シェアが10%を超える国は39カ国(2019年はわずか4カ国)
- インド+92%、インドネシア+128%と新興国で急拡大
- バッテリー価格が2013年比で80%以上下落
- 2026年は航続500〜700kmクラスとLFP電池の普及で「第二フェーズ」へ
つまり「EVは終わった」も「EVは伸びている」も、どちらも切り取り方次第で正しい。日経エネルギーNextが指摘するように、エネルギーの話題は「オワコン」か「完全勝利」かの両極端な言説が飛び交いがちだ。大事なのは、自分の生活という単位で「今のEVはどうか」を冷静に見ることだ。
なぜメーカーは人気がなくてもEVを推すのか
ここで一つの疑問が浮かぶ。これだけ赤字を出し、日本では人気も伸び悩んでいるのに、なぜメーカーはEV推進をやめないのか。理由は明確だ。
「やめられない」3つの構造的理由
① 各国の環境規制(待ったなし)。日本政府は2035年までに新車販売を電動車100%にする方針を掲げ、欧州・中国も同様の規制を進めている。規制をクリアできなければ車を売れなくなる。EV開発は「売れるから」ではなく「売り続けるため」に必須なのだ。
② 中国勢との競争。BYDをはじめとする中国メーカーがEV・バッテリー技術で先行している。ここで開発を止めれば、技術的に取り返しのつかない差がつく。赤字を出してでも開発を続けるしかない。
③ 巨額の先行投資を後戻りできない。各社は既に何兆円もEVに投資している。今さら「やっぱりやめます」とは言えない。損失を出しながらも前に進むしかないのが実情だ。
要するに、メーカーにとってEV推進は「需要があるから売る」という単純な話ではなく、規制・競争・投資という3つの force に挟まれた「やめるにやめられない」事業なのだ。この構造を理解すると、巨額赤字を出しながらEVを出し続けるメーカーの動きが腑に落ちる。
補助金で安く買える軽EV——2026年の狙い目
では、消費者目線で「今、買って得なEV」はあるのか。あるとすれば、それは補助金を最大限活かせる軽EVだ。
2026年度のCEV補助金(国)は、普通・小型EVが最大130万円、軽EVが最大58万円。これに自治体の補助金が上乗せされる。代表格の日産サクラやホンダ N-ONE e: は、国の補助金(軽EVで最大58万円・N-ONE e:の適用例は57.4万円)に加え、東京都なら都のZEV補助金60万円、さらに太陽光発電やV2H設置などの条件を満たせば10〜15万円が加算され、合計で最大130万円前後の補助が受けられるケースもある。
CEV補助金を受けて買ったEVは、一定期間(おおむね3〜4年)保有する義務があり、それより前に売却・処分すると補助金の返還を求められる。「補助金で安く買ってすぐ売る」ことはできない仕組みだ。また国のCEV補助金と東京都のZEV補助金は併用できないなど、制度には細かい条件がある。購入前に必ず最新の要件を確認してほしい。
| 車種 | 新車価格帯 | 補助金(国・軽EV) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ホンダ N-ONE e: | 約269.9万円〜 | 57.4万円 | 航続295kmは軽EVトップクラス。補助金後 実質210万円台〜 |
| 日産 サクラ | 約245〜300万円 | 最大58万円(+自治体) | 軽EVの定番・販売台数No.1。航続180km。Sグレード新設で約244万円〜 |
| 三菱 eKクロス EV | 約255万円〜 | 57.4万円 | サクラの兄弟車。航続180km。補助金後 Gグレード実質約208.8万円〜 |
| BYD DOLPHIN / RACCO | 約290万円〜 | 補助対象 | 中国BYD。RACCOは軽EVで2026年参入 |
2025年9月発売のホンダ N-ONE e:は、航続距離295km(WLTC)と軽EVトップクラスの電費を実現し、サクラの180kmを大きく上回る。補助金を使えば実質210万円台前半から買える。日産サクラ・三菱eKクロスEVが「街乗り特化(航続180km)」なのに対し、N-ONE e:は「もう少し遠くまで行ける軽EV」として差別化している。軽EVの選択肢は2026年、確実に広がっている。
ここで奇妙なことが起きる。軽EVのN-ONE e:(補助金58万円)の実質価格より、上位モデルのはずのスーパーワンの方が約53万円も安くなるのだ。軽自動車より小型車の方が安い——この「逆転現象」は、車の価値ではなく補助金額の差が生んだものだ。補助金が車選びをいかに歪めるか、よくわかる例だ。
2026年、ホンダはN-VAN e:(軽商用EV・約243万円〜)、N-ONE e:(軽乗用EV)、スーパーワン(小型EVスポーツ)と立て続けに電動車を投入している。巨額のEV損失を出しながらも、ラインアップを広げ続けているのは、前述した「やめられない構造」の表れでもある。
日産は2026年、サクラに従来比15万円安い廉価グレード「S」(244万8,600円)を投入。補助金込みで200万円を切る価格帯を実現し、参入してくるBYDの軽EVに対抗する構えだ。軽EVの価格競争は2026年、確実に激化する。
補助金ゆえにリセールが激安になる構造
ここからが本記事の核心だ。補助金で安く買えるEVには、見落とされがちな「裏側」がある。リセール(再販価値)が極端に低くなりやすいのだ。
なぜEVのリセールはこんなに低いのか
主要EVのリセールの現実を見てほしい。日産リーフは5年落ちで約23%、軽EVのサクラでも5年落ちで約35%程度。同価格帯のハイブリッドSUV(RAV4 HVなど)が5年落ちで55〜65%を維持するのと比べると、その差は歴然だ。
理由の中心が「補助金は新車にしか出ない」という制度の構造だ。新車なら100万円超の補助で安く買えるが、中古車に補助金は出ない。だから中古EVは「補助金のない正規価格」で勝負するしかなく、新車との価格差を埋めるために大幅に値下げせざるを得ない。補助金が手厚いほど、皮肉にも中古価格は押し下げられる。
さらに「バッテリー劣化への不安」「劣化状態(SOH)が見えにくい」「技術の進歩が速くすぐ型落ちになる」という要因が重なり、中古EVの需要そのものが伸びにくい。需要が薄いから価格が下がる、という構造だ。
| 車種 | 5年落ち残価率の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 日産 リーフ | 約23% | EV全体でも特に厳しい水準 |
| 日産 サクラ(軽EV) | 約35% | 軽EVとしては健闘も低め |
| トヨタ プリウス(HV・参考) | 約52〜55% | HVは下落が緩やか |
| トヨタ RAV4 HV(参考) | 約55〜65% | HV-SUVは高水準 |
※残価率は中古車市場の集計データ等に基づく参考値(2026年時点)。実際の買取価格は車種・年式・グレード・走行距離・状態・市場により大きく異なります。
だからこそ中古EVが狙い目——という逆説
ここで視点を変えてみよう。「リセールが激安」ということは、買う側から見れば「中古が破格で買える」ということでもある。
新車200万円超のサクラが、数年落ちなら大幅に安く手に入る。バッテリーの状態さえしっかり確認できれば、街乗り中心のセカンドカーとしてこれほどコスパの良い選択肢はない。実際、中古車相場メディアでも、日産の軽EVは「販売台数の多さ」と「EVのリセールの低さ」を背景に”神コスパ”の良質中古が豊富に流通していると評されている。
① バッテリーのSOH(State of Health=劣化状態)を必ず確認する。これが中古EVの価値を決める最重要項目だ。
② 走行距離と使用環境(急速充電ばかりの個体は劣化が進みやすい)
③ メーカーのバッテリー保証が残っているか
④ 自宅で充電できる環境があるか(これが最重要・後述)
リセールの低さは「売るとき」はデメリットだが、「買うとき」は最大のメリットになる。割り切って乗るなら中古EVは賢い選択だ。
最大の壁「マンション充電問題」——僕の実体験
ここまで「軽EVは補助金で安い」「中古EVは狙い目」と書いてきた。だが、これらすべてには大前提がある。自宅で充電できることだ。そして、これが日本のEV普及における最大の壁になっている。
日本は集合住宅(マンション・アパート)の割合が高く、全住宅の約4割を占める。戸建てなら200Vコンセントを数万円で設置できるが、マンションでは管理組合の合意が必要で、これが驚くほど高いハードルになる。
大阪のある大型マンションで起きたこと
これは僕が実際に見聞きした事例だ。大阪のとある大型マンションで、EV充電設備の設置に向けて「必要か不要か」を問うアンケートが住民に取られた。
結果は——大多数が「不要」と回答し、設置は見送られた。EV普及が叫ばれる時代に、現実の住民の声は「いらない」だったのだ。
この結果は、日本のEV普及のリアルを象徴していると思う。
なぜ「不要」が多数派になったのか——考えられる理由
住民が「不要」と判断した背景には、いくつもの合理的な理由がある。
| 反対・不要とする理由 | 住民の本音 |
|---|---|
| 今EVに乗っていない | 「自分が乗っていない設備のために負担したくない」 |
| 今後も乗る予定がない | 「次もガソリン車かHVのつもり」 |
| 台数の問題 | 「マンションの規模に対し全戸分は置けない。一部だけ設置しても不公平」 |
| 管理費・修繕費の上昇懸念 | 「設置・維持コストが管理費に乗るのは困る」 |
| 設備の陳腐化 | 「数年で規格が変わったら無駄になるのでは」 |
| 合意形成の手間 | 「誰がどう使い、どう課金するかルール作りが面倒」 |
特に「台数の問題」は本質的だ。100戸のマンションに充電器を全戸分置くのは物理的にもコスト的にも不可能で、かといって数台だけ設置すれば「早い者勝ち」「使えない人が損」という不公平が生まれる。この調整の難しさが、多くのマンションで設置を止めている。
一方、賛成派の意見も理にかなっている
もちろん設置に賛成する住民もいた。その主な論拠はこうだ。
「今EVに乗っていなくても、数年後には必要になるかもしれない。後から設置するのは合意形成も工事も大変だから、資産価値の維持のためにも、今のうちに設置しておくのが望ましい」——これは長期的な視点に立った、非常に合理的な意見だ。実際、充電設備の有無がマンションの資産価値に影響する時代が来る可能性は十分にある。
「今の不便」を見るか「将来の備え」を見るか。マンションのEV充電問題は、この価値観の対立に集約される。そして2026年現在、多くのマンションでは「今の不便・今のコスト」を重視する声が多数派なのが現実だ。
結論——僕がまだEVを買わない理由
ここまでデータと実体験を見てきた上で、僕自身の結論を正直に書く。
EVの技術も未来も否定しない。むしろ可能性は信じている。でも、今の自分の生活には、まだ合わない。これが本音だ。
理由はシンプルだ。自宅で確実に充電できる環境がなければ、EVの利便性は半減する。マンション住まいで充電設備が見送られた人、賃貸の人、自宅充電のあてがない人にとって、2026年のEVはまだ「待ち」の選択でいい。補助金で安く買えても、充電インフラという足元が揃っていなければ、日々のストレスが上回る。
今買っていい人:戸建てで自宅充電できる・近距離の街乗り中心・セカンドカー用途・補助金を最大活用できる人。特に軽EVは強くおすすめできる。
まだ待つべき人:マンション・賃貸で自宅充電できない・長距離移動が多い・1台で全てをまかなう必要がある人。この層は無理せずHVやガソリン車、もしくは割安な中古という選択が賢明だ。
「EVは失速したか」という問いへの僕の答えはこうだ。失速はしていない。ただ、日本の生活インフラがEVに追いついていないだけだ。技術は進む。補助金もある。でも、マンションの駐車場に充電器が付く日が来るまでは、多くの日本人にとってEVは「次の次の選択肢」であり続けるだろう。その日が来るまでは、賢く中古を選んだり、HVで燃料費を抑えたりするのが、地に足のついた現実解だと思う。
// 関連記事
🤖 クルマがスマホになる日——SDV・自動運転が変える車の買い方 🚗 なぜ今の日本人は「ちょうどいい車」を選ぶのか——2026年購買トレンド 💳 残価設定クレジット(残クレ)の全真実——月々が安いの裏 📉 なぜ日本でセダンは選ばれなくなったのか割安な中古EV・HVを条件で探すなら
リセールが低い中古EVは、買う側にとっては”神コスパ”。バッテリー状態の良い一台を探すなら条件登録が便利です。
AUTOMATCHは中古車マッチングサービスです。希望条件を登録しておくと、全国の販売店から条件に合った車両をご提案します。利用は完全無料です。
- 世界のEVブームは終わったのか? 日米の外に広がる世界の現実 — 日経エネルギーNext(2026年5月)
- ガソリン価格はなぜ不安定?/日本のHV事情・EVシェア — 日本カーソリューションズ(2026年5月)
- 軽EV ホンダ N-ONE e: の補助金を含めた実質価格を試算 — リセールバリュー総研(2026年5月)
- テスラ・EVのリセールバリューが低い理由|2026年版 — グッドディール(2026年5月)
- 日産サクラのマイナーチェンジと補助金・中古の神コスパ — リセールバリュー総研(2026年4月)
- 【2026年以降】EVの今後はどうなる?課題と各社の動き — Carconnect(2026年4月)
- 【2026年度】EVの補助金は上限いくら? — EV DAYS/東京電力(2026年4月)
※本記事は2026年6月時点の情報と、AUTOMATCH編集部の見解・実体験に基づく考察を含みます。補助金額・残価率・市場動向は変動します。最新の正確な情報は各メーカー公式・自治体・買取店にてご確認ください。マンションの事例は個別の一例であり、すべてのケースに当てはまるものではありません。






